メディア関係者として思うこと(下)

新聞記者をしていた頃、紙面化された記事を見て、「さすが新聞記者、文章が上手ですね」と言われることが時々ありました。その度に私は、
「記者でも文章下手な人たくさんいますよ」と答えていました。

文章力というのは、記者にとって必須のスキルではありません。圧倒的に大事なのは「取材力」です。小説書くわけではないので、口の堅い人から何かを聞き出す「粘り」とか、「コミュニケーション能力」、あるいは「観察力」「分析力」の方が求められます。
文章が下手でも誰かが手直ししてくれますが、情報を取れなければ、よその社或いは同僚にネタを取られ、無能扱いです。

一方、フリーライターはどうなのか。独立するくらいだから、よほどの書き手なんだろうと私は思っていましたが、これまた想像とは違うことが分かってきました。
誤字脱字、表現ミスが一切ない原稿は10分の1くらいで、たまに、何が言いたいのか分からない原稿もある。
ただ、フリーライターとして活躍している(と外から思われている)人は、発信力がとにかく優れています。
発信力って「文章」による発信とは限らないんですよね。話が面白かったり、最先端の何かをやってたり、時流にあった何かをやってたり。それらをうまく言語化して、拡散する力のある人へのアピールする能力が高い、とでも言えばいいでしょうか。

だから、なのですが、海外在住のライターというのは、元々発信力が優れているので、外国に移住して2、3か月でその国の事情について記事を書き始めます。そして売れっ子になります。
うまいんですね。その国の日本人社会や、日本語を話せる現地人から仕入れた情報を、日本に住む日本人向けのストーリーに仕立てるのが。

私も御多分に漏れず、中国行って1年もしない頃、古巣の契約ライターとして記事書いてたし。
でも当然ながら、そんな時期に書いた記事はだいたい、「外国の日本社会事情」です。取材相手が現地の人であったとしても、間に必ず日本関係者が入っています。

中国暮らしが4、5年になってくると、中国で根を張っていて、すごく情報を持っている日本人にも遭遇するようになるのですが、ほとんどの場合、彼らは発信力がない。というか、発信することを意識していない。
FBやツイッターには書くのですが、身内向けの情報なので、日本に住む日本人読者には刺さりにくい。

本当にもったいないことだと思います。
結果的に、日本メディアで読める海外情報は、かなり浅い内容であることが多く、それを真に受けてビジネス進出しうまく行かない……なんて事例も実際にあります。

これは、ライター以外の例でもありますね。やたらとメディアに取り上げられる企業とか経営者。学校、幼稚園etc...。業界では「なぜあそこばかり」と思われてそうですが、そこにも同じからくりがあります。
実力=発信力ではないけど、発信力も実力のうち、という感じでしょうか。

何度も言うけど、
本来発信するべき、価値ある情報を持っている人が、発信をほとんど意識することなく本業に没頭し、
その国の言葉を喋れるわけでなく、現地社会とも接点のない人が、日本メディアに情報を発信し、「専門家」として売れていく。
何なんだろうと思いつつ、そういう現実が分かったので、次に外国に行くまでに、東京でPR活動を頑張ろうなんて思っているのです。





にほんブログ村

にほんブログ村

にほんブログ村

この記事へのコメント